国内市場軽視はウソ!新型アウトバックの国内投入が遅れた本当の理由を考察
ついにこの秋スバルの新型アウトバックが国内市場に登場します。新型レヴォーグの売れ行きが好調なため一時はアウトバックの方は国内投入を見送るのではないかという憶測まで飛びましたが、とうとう出てくるようです。
この新型アウトバックは北米市場では2019年から発売されており、すでに年次改良を受けB型に進化しています。先日にはより本格的なオフロードモデルである「ウィルダネス」が発表され、三年目のモデルイヤーへ突入、C型の登場が目前に迫っています。
なぜここまで国内仕様の登場が遅れたのかについては諸説ありますが、よく言われるのがスバルは北米市場を優先して国内市場を軽視しているからというもの。
果たして、本当にスバルは国内市場を軽視しているのでしょうか?
今回はこの点について考察していきたいと思います。
スバルの”フラッグシップ”は何?から考える
アウトバックの国内登場が遅れた最大の要因は、スバルの国内営業がレヴォーグを優先してモデルチェンジさせたかったからでしょう。それは同時に、国内においてはレヴォーグこそフラッグシップであるというスバルからのメッセージと捉えることができます。
かつてスバルのフラッグシップは紛れもなくレガシィ・アウトバックでしたが、国内でそれを貫くには無理がありました。国内よりも北米で評価された5代目レガシィが証明したように、国内と北米では求められるサイズが異なるからです。
国内で歓迎されるのは主にCセグサイズ、そこを狙い撃ちしたのが2014年にインプレッサをベースにして登場した初代レヴォーグでした。結果、初代レヴォーグは販売面で成功し、上手くレガシィツーリングワゴンの灯火を引き継ぐことができたのです。
これを受け、スバルはレガシィではなくレヴォーグを国内市場でのフラッグシップに据える決定を下しました。
一方、北米市場でのフラッグシップがCセグサイズに留まるようでは、北米市場で6位のシェアを占めるメーカーとしてメンツが立ちません。フラッグシップモデルにはある程度のサイズが必要です。Dセグサイズに昇華した6代目レガシィの路線が間違っていないと確信したスバルは、北米市場でのフラッグシップをレガシィ・アウトバックに託し、北米ではレヴォーグは売らないと決断しました。
つまり、スバルは国内と北米でそれぞれのフラッグシップを作り分ける、という思い切った選択をしたわけです。
この異色の戦略的判断により、スバルは二つの重要市場でそれぞれのフラッグシップを集中して開発することができた訳です。
フラッグシップの並行開発によって更なる効率化を図った
実は、新型レヴォーグと新型レガシィ・アウトバックは並行して開発が進められたと考えられます。
特にフルインナーフレーム構造と呼ばれる新しいボディコンストラクチャは、現行スバルの中でこの2車種のみに先行して展開されています。
また、内装設計やテールランプの処理もかなり似通っており、ここでもやはり並行して設計された印象を持ちます。
さらには発表された年も同じ2019年です。レヴォーグは発売こそ2020年にずれ込みましたが、これは主にアイサイトXの調整に時間がかかったためと言われています。基本的な車両開発はほぼ同時期に終えられていたはずです。
もっと細かいところでは、ハンズフリーテールゲートのセンサをリヤエンブレムに配したという点も共通しています。
以上のように、両車にはサイズの違いからは想像できないほどの共通点が存在します。フラッグシップに一番大きな投資をするのはメーカーとして当たり前ですが、その中でも性能に妥協しない範囲で最大限の効率化を図ったことが伺えます。
国内を重視した結果が今回の新型レヴォーグ
さて、以上に申し上げてきたように、スバルが国内市場を全く軽視しておらずむしろ極めて注力していることが理解していただけたはずです。そもそも、国内市場を軽視していたら国内専用車であるレヴォーグは絶対に存在し得ません。
新型レヴォーグは周知のとおり極めて完成度が高く、評価が高いです。これこそ、スバルが国内市場を軽視していない証拠であります。アウトバックが遅れるのはラインナップとしての役回りが違うからです。
間も無くやってくる新しいアウトバック、ぜひ歓迎しようではありませんか。