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【先代の勢いどこへ】現行クラウンの敗因を考察①

「いつかはクラウン」「いつかのクラウン」

日本を代表するクルマといえば、多くの人がクラウンの名を挙げるのではないでしょうか?

一昔前は「いつかはクラウン」などとも言われ、多くの人にとってまさに憧れの一台でした。

 

トヨタのラインナップの中でも非常に歴史の長い、まさに名門ブランドであるクラウンですが、周知の通り15代目となる現行型は前代未聞の苦戦を強いられています。

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満を持して登場したものの、販売は苦戦。今やブランド存続の危機に晒されている

現行クラウンが登場したのは2018年のこと。それまでの箱型のボディから一気にクーペルックのスタイリッシュなセダンへと変貌したデザインや、”ロイヤル””マジェスタ”という、いわば歴代クラウンの直系とも言えるラグジュアリー版を廃止したグレード展開が大きな話題を呼びました。

 

トヨタはクラウンの購買層の若返りを図って、より若年層にウケの良さそうなスポーティ路線に振ったわけですが、この戦略がまずかったようなのです。現行クラウンはヒットした先代とは打って変わって全く売れていません。 

 

いえ、全く売れてないとはいっても、苦境に立たされている本格セダン市場において唯一気を吐いているモデルであることには間違いありません。他のブランドではほぼセダンが消滅しているか、存続していても風前の灯状態です。そんな中毎月まとまった数を売り続けている事実からは、現行クラウンも一定の市場評価を受けていると言っても良いのかもしれません。

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最近ではレガシィセダンが先代限りで国内撤退となったのが記憶に新しい

しかしながら、"巨人トヨタ"の販売規模を加味すれば現行モデルが一貫して苦戦を強いられていることは明らかであり、実際先代のモデル末期時よりも厳しいセールスが長らく続く事態になっています。

 

そんな中、昨年にはクラウンセダンが生産を終了するのではないかとの憶測も飛び交い、クルマ業界に激震が走りました。要するにそんな噂までで始めるほど厳しい状況なわけです。

 

おまけにクラウンは国内専用車。中国でも販売していますがあくまでメインは日本市場です。グローバル化が進行する中、先行きの怪しい国内専用車にこれ以上の投資するのは経営陣的にも悩ましいことであるはずです。

 

まさに、絶体絶命の存続危機。

 

「いつかはクラウン」と言われた憧れのモデルは、過去の記憶、まさに「いつかのクラウン」となってしまうのでしょうか。

 

そんな現行クラウンの敗因について数回に分けて考察していきます。

敗因①アルファードに客を取られた

クラウンに変わって近年販売が絶好調なのがアルファードヴェルファイアです。セダンよりも車内空間が圧倒的に広く見た目も十分ゴージャスなので、利便性・存在感ではセダンを凌ぐのは間違いありません。また、現行アルファードヴェルファイア(通称アルヴェル)は歴代クラウンが得意としていた法人向けの需要や見栄を張りたい人たちも取り込みました。現行クラウンはロイヤルとマジェスタがなくゴージャス感が薄れてしまったため、単に”豪華さ””華々しさ”を求めたいユーザーにはアルファードヴェルファイアの方が魅力的に映るのでしょう。また、子育て世代のニーズも高まってきているミニバンは、縮小の一途を辿るセダンに比べリセールが良いこと、さらにはこれをうまく利用した残価設定ローンの普及もアルヴェルの販売を後押ししたはずです。

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クラウンが得意としていた法人需要をも取り込んだ現行アルファード

これは余談ですが、車好きならご存知の通り、実はヴェルファイアは現在全く売れていません。契機となったのはフェイスリフトを敢行したビッグマイチェン。ますますオラオラ顔になったヴェルファイアは流石に「やりすぎ」と映ったようで、顧客をまだマシな顔のアルファードに持っていかれ、販売実績でアルファードに引き離されているのです。すでにヴェルファイアはグレードが削減されており、今後2年以内には登場するであろう次期モデルではモデルごと消滅、再びアルファードに一本化される見通しです。

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流石に”やりすぎてしまった”ヴェルファイアは一気にリストラ候補へ

敗因②旬のSUVにも顧客を奪われた

アルファードだけでなく、今をときめくSUVにもクラウンは顧客をごっそり奪われています。典型は新型ハリアーやレクサスRXでしょう。ミニバンより生活臭が少なく、セダンよりおじさん臭くなく、2ドアクーペより恥ずかしくない、と女性ウケも抜群です。幅広い年代層に人気となり、今や最もホットなカテゴリであることは疑いようもありません。近年特に加速度的に競争が激化していて、各社ともSUV開発には相当な力を注いでいます。そういう意味では現行のクラウン、タイミングが若干悪かったともいえなくはないでしょう。

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絶不調のクラウンをよそに販売絶好調の新型ハリアー

 さらにSUVはリセール価格も非常に良いので、そうした点でもやはりセダン以上の魅力を持っているといえます。

敗因③デザイン面での”らしさ”の欠如

現行クラウンの敗因として頻繁に指摘されるのが、デザインです。下の写真をご覧いただければ先代と現行型のサイドデザインの違いは一目瞭然でしょう。切長のヘッドライトや分厚いテールランプで構成される前後デザインは概ね先代から引き継がれた意匠ですが、サイド面に関しては大きく変更されました。最大の変更はなんといってもCピラー周り。細身でなだらかなデザインにすることで今までのクラウンにあった”オジサン臭”を消し、スタイリッシュでスポーティなのセダンになりました。

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いかにも”正統派セダン”なフォルムの先代。箱型のシルエットと太いCピラーがその証。

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現行は流行りでもある流線型のクーペルック。リヤのクォーターガラスが特徴的だが、細身のCピラーからはこれまでのクラウンらしい風格は感じられない。

ここには顧客の若返りを狙ったトヨタ側の意向が表れていると思います。しかし、今までのクラウンユーザーはこれをみて「もはやクラウンではない」と失望。また、他のセダンとの差別化もできなくなり、このデザインならわざわざクラウンでなくても良い、という意見も聞かれました。

 

内装についても評判は芳しくなく、他モデルからの流用品が目につくことなどから度々手抜きを指摘されています。直近のビッグマイチェンでは、使い勝手が悪いと酷評された前期型のディスプレイ周りを刷新し、どでかいディスプレイに置き換えられました。これは最近のトヨタの内装デザイトレンドにのっとったものと言え、使い勝手は改善したものの今度はクラウンらしい特別感をほぼ感じることのできない、ありきたりなデザインです。アルファードハリアーに完全に負けていると感じるのは筆者だけでしょうか?

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先代の内装はクラウンらしい堂々としたデザインで各パーツは専用デザインを与えられていた。

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現行の内装

ご覧の通り、ハンドルやシフトノブはハリアーRAV4といった本来”格下”なはずの他モデルと共用になっています。クラウンらしさを演出するウッドパネルも今回は使用が少なく、分かりやすいゴージャスさやボリューム感を持っていた先代と比べるとランクダウンした印象は否めません。

 

もっとも、最近はウッドパネルやカーボンパネルといったパネル類で上質感を演出する手法は減少傾向にあり、代わりにダッシュボード周りをステッチ付きのソフトパッドでカバーして高級感を出す、というのがトレンドのようです。しかし、クラウンクラスであればこの両方をうまくバランスさせてワンランク上の室内空間を作り上げて欲しいところ。そういった点ではやはりもう少し力を入れて欲しかったというのが大方の意見でないでしょうか?

敗因④(次回以降)現行クラウンがターゲットにした”若年層”に思わぬ落とし穴

以上のように、現行クラウンはあまりにコンセプトを変えたために既存ユーザーがらは拒絶反応を喰らったわけですが、しかしこれはトヨタも想定済みであったはずです。トヨタは今までの顧客が離れることを承知の上で、新たな需要・将来のクラウンファンを生もうとしたのでしょう。その新たな需要としてターゲットに置かれたのが、40代以下のいわゆる若年層。彼らに売れれば成功、それが15代目クラウンの市場目標であったと筆者は分析します。

 

ところが、現行クラウンはここに失敗したのです。現行クラウンの失敗の本質は、若年層にも買ってもらえなかったことなのです。50~60代以上の客層にそっぽを向かれたことは失敗ではなく予想通りだったはずです。

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流行り物が好きな若年層の興味は今や完全にSUV

では、なぜ若者はクラウンを選ばなかったのでしょうか?ここには二つの要因があると考えています。

 

ここからについては長くなりそうなので、次回(いつかになるのか。。)に回そうと思います。

 

次回以降、この敗因④とその他の分析、さらには今後のクラウンの行方について書いて行くつもりです。